「日本書紀」にも登場し、日本最古の温泉とも称される愛媛県・道後温泉。名だたる宿泊施設が軒を連ねる中でも、慶応4年(1868年)創業の老舗旅館「大和屋別荘」は、失われつつある“純日本旅館”の文化を現代に伝えるお宿として、唯一無二のプレゼンスを発揮しています。
伝統と革新、ラグジュアリーさと心地よさが同居した大和屋別荘は、MINAKI『極幻』の導入を決定しました。時代時代に合わせてサービスを進化させて着た同施設が、今の時代において『極幻』をパートナーに選んだ理由は何か?大和屋別荘の運営と和食料理を束ねるおふたりに訊ねます。
・プロフィール
大和屋別荘 奥村勇太専務
愛媛県出身。同志社大学を卒業後、帝国ホテルに入社。2017年、大和屋本店旅館に入社し、大和屋別荘とともに取締役に就任。2020年6月より代表取締役に就任した。道後温泉の魅力をもっと世の中に広めていくことをミッションとしている。
“泊まれるミュージアム”にも似合う酒
大和屋別荘の客室内に入った途端、い草のかぐわしい薫りが広がります。
「こちらでは一年に一度、畳を貼り替えます」と答えてくれたのは、大和屋グループの9代目・奥村勇太さん。帝国ホテルに勤務後、4年前に家業に戻った奥村さんは20代の若さで、「ミシュランガイド広島・愛媛」の4つ星も獲得したことのある大和屋別荘の後継者になるべく家業に戻りました。
西洋式ホテルの最高峰で接客経験を積んだ奥村さんにとっても、同施設が守り続けてきた、古くからの旅館文化は新鮮なものに映ったそうです。
「現在、全国に旅館は3万9千軒ほどある旅館の中で、古くからの旅館文化を守れている施設は年々少なくなっています。靴を脱いで館内に上がっていただくことや、夏と冬での年2回の障子替えなど、なかなかお客様には伝わりづらいことかもしれませんが、宿の価値として守っている風習が数多くあります」
過度な主張はしない、きめ細やかな大和屋別荘のおもてなし。かつて同施設に滞在した文人らの作品をはじめ、古今東西の貴重な書画、本物の工芸品がさりげなく配された館内はまるで、ゲストにだけ特別に用意された、個人的なミュージアムさながらです。
「部屋のあつらえやお料理1品1品に至るまで、決して華美ではありませんが、削ぎ落としたシンプルな美と味を意識しています。大和屋別荘だからこその “ラグジュアリーさ”とは『詫び』。日々の喧騒に疲れた現代人にぜひ感じていただきたい価値です。
日本酒を単に飲む以上の体験を与えてくれるMINAKIの『極幻』は、 “純日本旅館”としての価値提供をさらに盛り上げてくれ日本酒だと感じ、今回導入を決定しました」
大和屋別荘・奥村勇太専務
『極幻』を飲むのは、時間を味わうこと
大の日本酒好きだという奥村さん。さらに、家業のリサーチのために全国の名宿泊施設を訪ねながら、日本中の美酒を知る機会が多い彼にとって、『極幻』のどのように映ったのでしょうか。
「公私にわたり、さまざまな日本酒を飲ませていただきますが、印象に残るお酒は実は少ないと感じています。その中で、まさに『極幻』は印象に残るお酒です。おだやかな飲み口と洋梨のような香りが鼻腔をくすぐる第一印象はもちろん、口の中に残る余韻が長いところに何より惹きつけられました」
わずかな苦味と程よい酸味が伸びていき、すっきりとしていながらも贅沢な余韻を長く感じることができるMINAKI『極幻』。その芳醇な香りを存分に楽しむために、ワイングラスで味わうこともお勧めしていますが、奥村さんの提案は、お宿ならではの視点がユニークです。
「『極幻』は銘醸ワインのように、長時間をかけて味わいの変化も楽しめる日本酒ですよね。日本酒の次にはウイスキーが好きなのですが、やはりそれは余韻を長く味わえるからです。外国映画を観ていると、ウイスキーをグラスにくゆらせる場面が出てきます。『極幻』はそんな役割も担えるのではないでしょうか。
1日の移ろいを感じることと、『極幻』を飲みつつ、時間を味わうことはよく似ていると思います。お料理のタイミングに限らず、お部屋で窓辺に腰かけて『極幻』を味わうーー。そんな時間もお客様には過ごしていただきたいものです」
大和屋別荘は、宮崎駿監督のアニメ映画「千と千尋の神隠し」の温泉宿のモデルとなったと言われる道後温泉本館のほど近くの風情あふれるロケーション。ただ、少し高台に位置しているため温泉街の喧騒からは逃れる場所です。
静謐な雰囲気に包まれ、『極幻』をゆったり味わうひとときは、人生に刻まれるプレシャスな記憶になるかもしれません。
日本らしい感性で、グローバルに勝負する
大和屋別荘の奥ゆかしくも、心配りを感じられる態度は料理にも通じています。
「せっかく愛媛までお越しいただいているので、お料理もお酒も、できる限り地元のものを使うようにしています。ただ、それ以上に『その時節の本当に美味しいもの』をお客様へお届けすることが大事。産地にこだわり過ぎないような塩梅も心がけています。今回、『極幻』との出会いによって、地元の蔵元とはまた異なる芳醇な味に感動し、ペアリングのコースを設けさせていただくことになりました」
同コースは、季節に合わせた月替わりの全10品の会席料理と厳選した日本酒4種で構成されます。器も有田焼の一級品でゲストに提供。八寸(約24cm四方の盆に載せてプレゼンテーションする料理のこと)とともに、最初に登場するのがMINAKI『極幻』です。大和屋別荘の和食部門を束ねる料理長は、「自分の役目は、いかに素材の美味しさをただ引き出すだけ」と照れながらも、ペアリングのポイントについては次のようにそっと伝えてくれました。
大和屋別荘・料理長
「料理・お酒ともにまず始めにお客様の前にお出しするものですので、味だけでなく、目でも愉しめるインパクトを与えたいと思っています。また最初に『極幻』を味わっていたくことで、以降のお酒との違いをより深く感じていただけるかと」
5月の取材時の八寸は、粽(ちまき)や兜の器に入れた白和え、端午の節句を表した品々といった、目にも愉しい前菜が8品。蓮根松風焼きの食感との組み合わせ、手毬寿司とのマリアージュなど、料理によって変わる『極幻』の味わいを心ゆくまで楽しむ体験ができます。
最後に、奥村さんはリスペクトしている、スティーブ・ジョブズも愛した京都・俵屋旅館になぞらえて『極幻』を「禅文化にもつながる魅力を秘めるもの」と表現してくれました。
「ボトルだけでなく、箱や中に収められている冊子などのクリエイティブも、削ぎ落とされた美しさがあって、栓を抜く前から気持ちを高めてくれます。そんな『極幻』は、飲む前、飲んでいるとき、それから飲んだ後も、すべての時間が特別な体験になりそうですね。
忙しい現代において、自分と対話できる時間を持つことでは容易ではなく、何らかの“装置”が必要だと感じます。私はサウナが好きなのですが、大和屋別荘のような純日本旅館も、そしてMINAKIのような特別な日本酒も、そのような装置として機能するのはないでしょうか」
「きっと海外でも愛される力を持つ、日本だけにとどまらないブランド」とエールを送ってくれた奥村さん。日本の酒造りの叡智を武器に、グローバルで普遍的な価値提供を目指してMINAKIの挑戦は続きます。
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・道後温泉 大和屋別荘
住所:愛媛県松山市道後鷺谷町2-27
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