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ソムリエが教える、日本酒テイスティング

ソムリエが教える、日本酒テイスティング

せっかくいい日本酒を買ったけれど、その保存方法や飲み方について、“なんとなく”自己流、という方も多いのではないでしょうか。

でも、日本酒もワインと同じで、その保存方法や飲み方で、おいしさが格段に変わってくるのです。ちょっと知っているだけで、普段の日本酒ライフがぐっと楽しくなる知識を、「鶫」ほか人気飲食店のオーナーソムリエとして活躍する進藤幸紘氏に教えていただきました。

・プロフィール
ソムリエ 進藤 幸紘
1986年、千葉県出身。東京エコール辻卒業、田崎真也氏プロデュースの”レストランS”にてサービスを学ぶ。ロンドンに渡りソムリエとして星付きのレストランで勤務。帰国後、ミシュラン一つ星の六本木Seiresマネージャーを経て、現在は「鶫」「鮨 波残」「もんじゃ萬雷」「焼鳥 鶉」など他業種を経営するオーナーソムリエ。

自宅で日本酒を保存するときのコツ

日本酒を楽しむ際、その目的に合わせて酒器にこだわるとより一層美味しくいただける、ということを「日本酒の個性を引き出す、酒器選び」の記事で教えてくれた進藤さん。自宅で日本酒を楽しむときにも、そのセオリーにあわせて自由に酒器を選んで楽しんでほしいと語ります。

しかしそれも、日本酒のコンディションがいい状態であるという前提あってのこと。それにはもちろん、保存方法も大きく影響してきます。

実は日本酒をよく飲む方であっても、ワインの保存には気を使っているのに、日本酒の保存には無頓着、ということも多いのだそう。

今回飲み方をレクチャーしてくれた、ソムリエの進藤幸紘さん

「一般的に、“日本酒は火入れをして酵母の働きを止めているから、常温保存可能”とされていますが、日本酒もワインと同じ醸造酒。夏場の高温になる室内や、日が当たる場所はもってのほかですが、人間が心地よく感じる室温であったとしても、繊細な香りや旨味を楽しむためには冷蔵保存を推奨します」と進藤さん。

保存は生酒も、吟醸酒も通常の冷蔵庫で保管してOK。品質も安定し、状態良く保てるといいます。一方、冷蔵庫で保管する懸念点としては、すぐに飲む場合の温度。冷蔵庫から出してすぐの日本酒は飲むのには低すぎるのでは……? 

テイスティングを楽しむ方法

そんな疑問を投げかけてみると、「冷蔵庫の温度はだいたい5度くらい。キリッと喉越しを楽しみたいときはそのまま飲んでもいいですが、香りや旨味みを楽しむには少し低い温度です。もし、日本酒本来の香りや旨味を楽しみたい場合は、グラスに注いでから、グラスを手で覆うようにして温めるといいでしょう」と低すぎる問題をあっという間に解決。冷蔵庫から出して常温に放置するのではなく、手の温度を使うことで素早く、好みの具合に調整することができ、華やかな香りを楽しむことができると教えてくれました。

グラスで飲む時には、スワリングをすると、一層香りが立つ。

さらに、日本酒の個性を楽しむためのコツとして、好みの温度にしたのち、ワインと同様スワリング(ワイングラスをもって空気を含ませるように回す)してみて、と進藤さん。
まずはグラスに注いで回さず香ってみる。その後鼻を外してグラスを回す。
持ったまま回すのが難しい方は、グラスを置いて回してもOK。回す回数は3回ぐらい十分です。そしてスワリング前と後の香りの変化を楽しんでみて下さい。

「最近の日本酒は、作り方が繊細なものもたくさんあります。『MINAKI』の“極幻”のようなふくよかな香りで、旨みもあるのに、すっきりと雑味がない日本酒は、スワリングするとより香りがたち、旨味も感じると思いますよ」とのこと。

この時に注意したいのは、グラスに入れる量。ワイン(約100ml)よりも少なめの60〜70ml程度がおすすめ。ワインと違ってアルコール度数が高い日本酒は、少なめでも十分香りを楽しめますし、ワインに比べ飲むスピードもゆっくり。たくさん入れてしまうとせっかくの温度が変わってしまうので、ワインを注ぐよりも少なめに注いでください。

日本酒と相性のいい料理は、温度変化でもっと広がる

グラスに注ぐ時には量に気をつけて。

さて、いざ日本酒を家で飲もう、と思ったときに、つまみは刺身や日本料理一辺倒だったりしませんか? 実は、香りや旨味の濃い日本酒は、温度や飲みかたを工夫することで思った以上に幅広い料理に合うのです。

実際に、中国料理、焼き鳥、お寿司、と様々な業種のお店を営んでいる進藤さんも、すべてのお店でMINAKIの「極幻」を提供しています。

具体的に、どんな料理にどんな風に合わせているのでしょうか?

香りとすっきりとした旨味のある日本酒は、1本でさまざまな料理に合う。

意外に思うかもしれませんが、脂を強く感じる料理にも日本酒は合います。ポイントは温度に気を配ること。たとえば、「鮨 波残」では、のどぐろの寿司に「極幻」を合わせています。このときは、チューリップ型のシャンパングラスで5度程度に冷やしたものを。磨きの割合が多いすっきりとした日本酒なら、クリアできれいな味わいが引き立ち、こうしたパンチのきいた焼き魚や肉とも合うのだといいます。

極幻を提供する「鮨 波残」

「たとえば『焼鳥 鶉』ではアツアツのぼんじりなどの焼き鳥にも、この飲み方で出します。肉汁に含まれる脂や肉の食感の食べ応えを、冷たくした日本酒から感じる酸味で切っていくイメージです。ワインだと口に残りますが、いい意味でクリアな雑味のない日本酒は口に残らない。このキレイな余韻が脂のうまみと調和するんです」(進藤さん)

一方、12度くらいの常温にした、きれいな味わいの純米吟醸酒は、鉄分が豊富な食材に合うといいます。

「たとえば、今ヘルシーと注目を集めているカンガルーの肉や馬刺し。牛フィレなども常温の日本酒はよく合いますね、もちろん、王道のマグロの赤身にもいいでしょう」とのこと。香りが高く、かつ旨味もある純米吟醸酒は1本あれば、温度や酒器のバリエーションでさまざまな料理に寄り添える懐の広さがあると教えてくれました。

しかし、いくら懐が広いとはいえ、こうした日本酒を燗酒にするのはおすすめしないとのこと。

「燗酒は、香りを楽しむよりも、旨味の強さや酸味を楽しむもの。旨味の強い純米酒や本醸造酒などが燗酒向きです。日本酒の特性によって楽しむ温度帯を分けると、より、それぞれの日本酒を楽しむことができるでしょう」と話してくれました。

温度と器をいろいろ組み合わせながら、お気に入りを見つけていく。そんな楽しみを重ねていけば、ぐっと日々の日本酒体験が充実したものになるでしょう。

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・「鶫」「鮨 波残」「もんじゃ萬雷」「焼鳥 鶉」
住所:東京都港区西麻布1-4-48 大樹ビル1F・2F
Webサイトはこちら

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